「ソフティモ」ってほぼほぼ伊野尾くんじゃん。

もしHey!Say!JUMPがオムニバスドラマをやったら。

TwitterでみたJUMPちゃんオムニバスドラマ妄想に触発されて書き殴った。(完結しました!)

とある街のとある喫茶店。都会でもなく田舎でもないその街の、駅から程近い場所にあるその店は、カフェというほど小洒落てもなく、かといってチェーン店ほど雑然としてなく、そのちょうどいい雰囲気が居心地がよいようで、サラリーマンから学生までいつもさまざまな客が訪れていた。名物は先代のオーナー(竹中直人)直伝の美味しい珈琲。

ー今日も、一杯の珈琲と一つの物語がこの店にやってくる。ー

〜珈琲を淹れる薮くんの映像とともにオープニング〜

第一話 中島裕翔の場合
あらすじ
保険会社に入社して3年目の裕翔くんが、自分のできることとできないこと、思い描いていた理想や未来と現実との間で悩みながらも、仕事を通して自分と向き合い成長する等身大の姿を描く。

冒頭
保険会社で働く裕翔は珈琲をひとくち啜ると大きな溜息をついた。あまりに溜息が大きかったので伝票を置きにきた店員(薮)がちょっと驚いたように一瞬眉を上げたが、慣れているのかすぐ何事もなかったかのように戻って行った。裕翔は少し苛々していた。後ろの席に座ったカップルが何が楽しいのか馬鹿みたいに笑ってるのも耳障りだ。いい歳してパフェなんか頼むなよ。昨日、岡田先輩に言われた言葉が頭から離れない。入社して3年、仕事にも慣れてきた。上手いことやれてると思っていた。でも、自分がやりたいことってなんだったのか。

第二話 髙木雄也の場合
あらすじ
ホストクラブで働く雄也が、ある日喫茶店に来る途中でちょっと風変わりでおしゃべりで人懐っこいお婆さんと偶然出会い、お婆さんに調子を狂わされつつも、次第に心を通わせていく。一見近寄りがたいホスト雄也の心優しい一面にときめくハートフルストーリー。

冒頭
雄也はこの街から電車で3駅先にある繁華街のホストクラブで働いている。出勤前の夕方、いつもこの店で一杯の珈琲を飲むことにしている。雄也は自分の生活が好きだった。ホストクラブではNo.1ではないけれどそこそこ固定客も着いているしオーナーからの信頼も厚い。キャバ嬢のあけみちゃんとOLの加奈と不倫中の人妻景子さんとのコンスタントな肉体関係も良好だ。何の問題もない。休日は愛車に乗って海へドライブする。好きな音楽をかけながら。昼前にベッドを出て、シャワーを浴びて、トーストに野菜ジュースの簡単な食事。完璧だ。予想外の出会いやアクシデントは必要ない、そう思っていた、あの日までは。

第三話 有岡大貴の場合
あらすじ
突然付き合っていた彼女から別れを告げられたフリーターの大貴。フられてどん底まで凹むけど、友達とサッカーして焼肉くってたらまあいっかってすぐに楽しくなっちゃって、でも最終的に「私にはやっぱり大ちゃんしかいない」って言われて、なんとなく釈然としないし、女の子の気持ちとか全然わかんないけど、やっぱりまあいっかって、「俺も!大好き!」って笑顔で伝える、なんてことない男の子の日常を描いたドラマ。

冒頭
「ねぇ私たちもう別れよ?」俺は頭が真っ白になった。なんでだ。さっきまで、ほんの2時間前まで、らぶらぶだったじゃないか。待ち合わせして(ちょっと遅れちゃったけど)ゲーセン行って、UFOキャッチャーで彼女が欲しがってたジバニャンをとってあげてもちろん彼女は喜んでたし、そのあとちょっと疲れちゃったからって喫茶店に入ってパフェを食べて…「あっもしかしてパフェの苺を俺が食べちゃったから?まじでごめん!」彼女はふるふると首を振って言った。「前から思ってたの。私と大ちゃんはなんか合わないみたい。」意味がわからない。なんでだよ!!!

第四話 山田涼介の場合
あらすじ
顔面はイケメンなのになぜだか女の子にモテない山田くんが、彼女をつくる!運命の人を探すんだ!と意気込んで合コンに挑み、そこで出会った年上の女性に猛アタックするラブコメディ。

冒頭
「俺、オレンジジュース」「ジンジャーエールで」「コーラお願いします」口から出かけた「珈琲を頼め珈琲を」という言葉をぐっと抑えながら店員はニッコリ笑って注文をとる。三人組(山田、知念、岡本)は大学の同級生のようで、暇を持て余した大学生らしく午後の早い時間からやってきては各々会話もせずに携帯をいじったり、試験前だと言ってやばいやばいと連呼しながらやる気があるんだかないんだか申し訳程度に参考書を開いたりしては長居をしていた。

「あ〜〜彼女欲しーーっ」「山ちゃんそればっかりじゃん」「や、だって重要よ?俺の運命の人はどこー!?」「運命の人って古くない?」「まあまあ、出会いが欲しいってこと!それでね、俺考えた」「何を?」「合コンをしようと思います!!やっぱさ、出会うには合コンが早いって、って知念聞いてる?」「…あ、ごめん聞いてなかった」「なんだよ!聞けよ!」
なんだか上の空の知念はおいておいて、俺は圭人に段取りを説明した。決戦は来週の金曜日、年上の女性が集まる合コンであること、年上の女性にモテるためにはやっぱり株の話の一つや二つできたほうがいいだろうということで「はじめての株式入門」という本を昨日から読み始めたこと。ともかく何が何でもそこで運命の彼女を見つけて、あわよくば「お持ち帰り」してやるんだ!「どうしたの?山ちゃん、顔がにやけてるよ」「うっせ。ともかく圭人も協力頼むよ!な!」

第五話 知念侑李の場合
あらすじ
霊感が強い知念少年が喫茶店で関西弁のうさんくさい幽霊に出会い、いやいやながらも幽霊が成仏するために現世に残してしまった後悔を解決すべく、一緒に協力してあげるファンタジーコメディ。

「…って知念聞いてる?」「…あ、ごめん聞いてなかった」「なんだよ!聞けよ!」「ちーちゃん様子変じゃない?大丈夫?体調わるい?」
ああ、大丈夫と空返事をしながら、知念は目を泳がせた。整理しよう。この席にいるのは誰だ?僕と山ちゃんと圭人。3人。そうだよな。じゃぁあの四人目は誰だ?山ちゃんの隣に座っているあの男は誰なんだ。男は懐っこいニコニコした笑顔を知念に向けて、いたずらっぽくニヤっとすると手をひらひらと振った。まただ。また見てしまった。知念はがっくりと肩を落とした。小さい頃から人より霊感が強かったけど得をしたことなんて一度もない。面倒なことばっかりだ。
「じゃぁ俺ら先行くからね」2人が先に店を出ると知念は男と向かいあった。「山ちゃんの合コンうまくいくとええなあ?」「いや、どなたですか?」「あっ俺?俺は大倉。幽霊や!下の名前はただよしやからたっちょんて呼んでな!」「いやいやいや、幽霊やっておかしいでしょ?」「ゆーり!お前を男と見込んで頼みがある!」ほらね、やっぱり面倒なことばっかりだ。

第六話 岡本圭人の場合
あらすじ
ツイてない男、岡本圭人が引き起こす、史上最高にツイてない一日の話。一日の最後には最高にツイてる出来事が待っているのだが、それは終わり良ければすべて良しなのか、はたまた次のツイてない出来事への伏線なのか。

冒頭
ガシャン!と音をたててコップが倒れた。「あっすいません」「…洋服濡れちゃったんだけど」「すいませんすいません」店員がすぐにタオルを持って駆け寄ってきて拭いてくれたので、圭人は振り向いてぺこぺこと誤りながら店を出た。「なにやってんだよ!あの人絶対ホストだぜ、怖い人たち出てきたらどうすんだよ」「ごめん山ちゃん、どうしよう」「知らないよ。ったくお前ほんとそうゆうとこあるよ」「うん…」

岡本圭人はツイてない男だった。小学校の入学式も卒業式も、中学校の入学式も卒業式も、高校の入学式も雨だった。高校の卒業式には季節外れのドカ雪が降った。リレーの選手に選ばれた中学校の運動会は、前日に自転車とぶつかって骨折。福引きではいつもポケットティッシュ。今年の正月に引いたおみくじには見覚えのありすぎる「凶」の文字。この歳まで生きていればツイてない人生にも慣れてくるというもので、ちょっとやそっとのツイてなさくらいでは逆にびくともしないという心持ちにすらなってくる。
しかし、それにしてもだ。それにしても今日はひどいんじゃないか。朝は目覚まし時計が壊れていた。よく壊れるので3つ用意しているのにその全てが、だ。走っていると道を迷った外国人とお婆さんに声をかけられる。電車は遅延。当然のようにバイトには遅刻し、店長にこっぴどく叱られた。大学でしょんぼりしているところを友人の山田と知念に誘われて来たいつもの喫茶店ではうっかり水を零してしまった、ホストみたいな人に。きっとあのひとは怖いホストでこれから仲間がたくさんきておどされたり殴られたりするかもしれない、と思いつくなかで最低のケースを想定して、圭人はこれからくるツイてない出来事に心の準備をした。しかし、ツイてない出来事とはいつも全く想定していない角度からやってくるものであり、圭人はまだこれが今日という日の序章にすぎない。ということを知らなかった。

第七話 伊野尾慧の場合
あらすじ
文学部の大学院生である伊野尾は、喫茶店の窓際の席でいつもひとり読書をしていた。伊野尾くんが図書館でたまに顔を合わせる名前も知らない女性に恋をして、本を介して少しずつ仲を深めていく、ほのかで淡い恋心を描いたラブストーリー。
 
冒頭
本の虫、とよく言われる。自分でもそうだと思う。物ごころついた時から本が好きだった。地元の図書館にある児童書は全て読んでしまったし、図鑑、辞書、家にある通信販売のカタログにいたるまで夢中になって読みふけった。好きな本について研究したいと、文学部に進み、大学院で研究を続けている。文学の世界は興味深く、また自分のペースで続けられる研究生活というものも彼には合っていたようで、それなりに有意義で充実した生活だ。それでも何か論文の材料を見つけるために、何かの目的を持って読むのではない、ただただ本の世界に浸るだけの読書を求めて、近くにある図書館で手に取った本を借りてきては、いつもこの喫茶店で読書にふけっていた。何の変哲もない喫茶店なのだが、それが逆に気取っていなくて感じがいいし、適度に騒がしい店内の声も読書に集中するには適している、と彼は思っていた。なにより珈琲が美味い。
今日、彼は少し興奮していた。半年くらい前から図書館で顔を合わせるようになり、なんとなくお互いを認識するようになり、次第に会釈をするようになり、会うと短い挨拶を交わすようになった。そして、今日はついに、名前を聞いた。噛み締めるように心の中でその名前を唱えてみる。自分はいったい彼女の何に惹かれているのか、と考える。いつもひとつにぴしりと結わかれた黒い髪、耳についた星の飾りのピアス、白い肌、俯くと影を落とす長い睫毛。とりわけ好きなのは本を触る彼女の手だ。丁寧に優しく十分に注意して棚から本を取り出す彼女の手つきはいっそ官能的ですらある、と彼は思った。
「ガシャン」というけたたましい音ではっと我に返る。見回すとさっきまで隣のテーブルにいた大学生が、狭い店内を通る時に他の客の水を倒したようだった。開いた本に目をやると、ほとんど読み進んでいないことに気づく。「思春期の男子高校生でもあるまいし」とひとりごちて苦笑した。そうだ、この本が読み終わったら、今度は思い切ってこの喫茶店に誘ってみよう。とびきりうまい珈琲があるから、と。それはとてもいい考えに思えたので満足げにうなづくと、彼は目を落とし再び本の中の世界へと戻った。

第八話 八乙女光(と薮宏太)の場合
あらすじ
臨時休業日の喫茶店。いつもとは違う静かな店内で、自分で淹れた珈琲をゆっくりと飲んでいる薮のもとに、いつも食材を配達してくる光がやってくる。珈琲を飲みながら話す二人のお話。


冒頭
珈琲を淹れていると勝手口がカランカランと開いた音がした。「ちわーっす。あれ?やすみ?」「前から言ってただろ」「冗談だよ、覚えてるって。あ、俺にも珈琲淹れてよ」返事をするよりも前に光はするりと細い身体を滑らせるようにカウンターに座っていた。猫が嫌いなくせに猫みたいなやつだ、と俺は思う。「バイトとか入れれば?若い女の子とか」「そんな余裕ねぇよ」もう見飽きたであろうメニューをぺらんぺらんとめくりながら光が言う。「なんかさぁ古いんだよね。パフェとか、今時頼むやついんの?」「こないだカップルが頼んでたよ」「かーっ来る客も古いんだな」相変わらず光は口が悪い。「やっぱさ、なんつうんだっけ、フレンチトースト?みたいなの、やったら?駅の向こうの店、あれ始めてからすんげえ行列だぜ?」「いいんだよ、行列なんてできなくて。喫茶店は、お洒落じゃなくていい、気取らない方がいいんだ…」「…ただ珈琲さえ美味しければ、だろ?先代の口癖。」そうだ、光は俺よりもずっと前から知っているのだ、先代のことも、そしてこの店のことも。子供の頃に両親が離婚した光は、仕事で帰りの遅い母親の帰りをよくこの店で待っていた、と以前聞いたことがあった。自分のことをあまり話したがらない光のことだし、それ以上はこちらからも聞かなかったのだが。俺が淹れた珈琲をゆっくりと飲むと光はこちらを見てニヤリとした。「だいぶ上手くなったじゃん、淹れるの」「これでも人気の味なんだけどね」まったく、叶わないな、と思う。俺は、いつもより少し緊張しながら淹れた三杯目の珈琲を、光の隣の空いた席にそっと置いた。
 
〜fin.〜
 
あとがき
妄想という妄想を総動員したオムニバスドラマ、完全なる自己満足だけど楽しかった!ぜひ、いつか、ほんとうにJUMPちゃんたちのオムニバスドラマが実現しますように!